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EGUJIG HISTORY

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それは、遡る事13年前の2003年。

 

僕が、現在のJB TOP50の前身であるJBワールドシリーズに昇格した年。

その当時、ごく一部の若手プロ達は、スモラバの原型と言える「シリコンラバーを用いた軽量ラバージグ」を自前で作っており、それがシークレット的に流行していた。

以前にも軽量ラバージグは無かった訳では無いのだが、それらとの決定的な違いはラバーのカッティング方法にあった。

それまでのラバージグと言えば、全てのラバーを均一にカットするのが常識だったが、自作ジグはフロントラバーを短くカットし、エリのように逆立て抵抗を作る。そしてリアの約半分をフロントと同等に短く、残りは長くなびくようにカットするというものだった。

 

ちょうど今のエグジグのカットが、少々荒削りな状態をイメージしてもらえれば間違いない。

このセッティングを、0.9gをベースとした、当時では超軽量と言えるジグヘッドに巻く事で、漂うような超スローフォールと、生物感溢れるアクションが完成するのである。

ここまではどの選手が作成するジグとも大差ないのだが、僕が作成するスモラバを他の選手のスモラバよりも効果的なものに昇華させていくにあたって、最初に着目したのは「ラバーの張り」だった。

シリコンラバーは、太くなれば張りが強くなり、細くなれば張りは弱くしなやかになる。スモラバは小さく繊細な物。

太すぎるラバーを使用しては、ビジュアル的な繊細さに乏しく、強い張りで理想的な水押しは実現出来ても、繊細なアクションは出しにくく大味な仕上がりになってしまう。頭の中では漠然と「もっと細くて、張りの強いラバーがあれば…」と、思いながらもジャクソン開発チームのバックアップがある今とは違い、その時は個人制作の範疇だったので、使用していたラバーはもちろん市販品。

その市販品の中で、一番イメージに近い太さの物を選び作っていたのだが、試行錯誤は続けていく内に奇跡が起こる。

その奇跡が起こったのは、最良のカラーを追及する為、ワームの染色剤を使いシリコンラバーを染色していた時の事。シリコンラバーは、ワームの染色剤で着色が可能。

しかし、ワームと比べて色のノリが悪く色落ちも激しい。

また、塗料を乾燥させたままの状態だとラバーの表面が、塗料でガビガビになってしまう。

その為、余分な塗料を洗い流す為、単純発想で食器用洗剤を使用し洗い流してみたところ、色合いはもちろん、艶も出て、何かの科学反応なのか未だに謎だが、パラッとした質感の、固く張りのあるまさに求めていたラバーに変身を遂げたのだった。

そんな予想外の運びでラバーは出来上がったのだが、もう一つ苦労したのはジグヘッド。

当時は、スモラバに適したサイズのフックを搭載したジグヘッドは少なく、またサイズ的には良くてもフックの軸が細く強度不足な物など、「これ」といったものを見つけるのは困難を極めた。

色々と試した結果、ライトソルト用に販売されていたちょうど良いジグヘッドを発見する。

しかし、これだけでは終わらない。

そのジグヘッドをベースとしてスモラバ用に適した加工を施さなければならないのである。

ルーターを使用してラバーをしっかりフレアさせる為のスカートホールを掘り込み、ヘッドを塗装。

(まだFECOタックル制限が無い時代だった為、初期モデルは鉛のジグヘッドを使用。

鉛の光沢を抑える為に塗装は必須だった。

後にFECOタックル規制と共に樹脂タングステンヘッドへシフトしていく。)塗料が乾燥し次第、ピンバイスでガードホールを空ける。

そのジグヘッドにラバーをタイイングしてカット、最後にガードを植えて完成。この様に手間暇を惜しまず作られていたのがエグジグの原型と言える自作スモラバだったのだ。

その効果は凄まじく、時としてジグが、底を付かない事もしばしば。更に今まで攻略の難しかった「見えバス」もあっさり口を使うなど、その余りの威力にしばらくはシークレットとして使用していた事は言うまでもない。

そのスモラバのおかげもあり、優勝こそ出来なかったものの常にトーナメントで安定した成績を残すことが出来た。

ただし、使い続けていく内に自作スモラバにも改善したい点がいくつか出てくる。

まず一点目は、ジグヘッドの「アイの角度」。

当時使用していたものは、アイの角度が最もオーソドックスと言える90°アイ。

もちろんオープンウォーターではこれで全く問題ない。

けれども、ちょっとしたカバーを攻める場合などは、その角度によりすり抜けることが出来ず、ここ一番でスタックしてしまう事が多くストレスを感じていた。

では、ガードの本数を増やせばどうかというと、フッキング率が落ちてしまう。(そもそも、アイの角度でスタックした場合、少々ガードを増やした程度では、さほど効果はない…)それを改善する為には、「アイの角度を前倒し」にしてすり抜けやすくする必要がある。

二点目は、「ラバーのカラー」。

染色しなくてはラバーに張りが出ないので染色は必須。

しかし、染色剤のカラーの種類が少なく、故にカラーバリエーションが作れない。

そして最後の問題は、「手間が掛かりすぎる事」。

試合でこのジグをメインルアーとして組んだ場合は、これだけの複雑な作業が必要な物を毎回100個ほど制作し用意していた。

(もちろん100個を全て使い切る訳では無いが、大胆に攻める為には沢山の球数があるという心の余裕が必要であり、試合では僅かなフックポイントの摩耗でもすぐに交換してしまう為である。)

正直、面倒な事が嫌いな自分の性格上、試合の度にこれだけの労力をかけるのは大きな負担。

単純に手間が掛かるだけなら頑張れば良いだけの話なのだが、オリジナルフックやオリジナルラバーの特注は、そのロット数が莫大であり、決して個人で消費出来る量では無く、また金銭的にも無理がある。

シークレットとして隠し続けたいと思う一方で、使えば使う程大きくなる自作スモラバへの不満。

いつしかこれらの問題をクリアした、よりクオリティーの高いスモラバをリリースしたいという気持ちが強まっていった。

 

そんな経緯から、遂にそのスモラバを商品化する事を決断した。

フックに関しては、当然特注フックをオーダー。ポイントの鋭さ、強度など基本的な部分は言うに及ばず。

サイズや、形状・バランスなど各所にこだわりがあるのだが、特に力を入れたのは、例の「アイの角度」と、「フックの線径」。

最初に、「アイの角度」に関しては、90°に近づけば移動距離を抑えた細かいアクションが付けやすいが、すり抜けが悪くなる。

逆に0°(シャンクがストレートな状態。)に近づいていくほど、すり抜けは良いが、移動距離は大きくなり細かいアクションが付けにくい。また、ガード付きのジグの場合は、このすり抜けの良さがフッキングの悪さにも繋がる。スモラバの場合に大事なのは細かいアクション演出。それに加えて、すり抜けも両立したい。

そのため生針を手曲げし、色々な角度を試した結果、落ち着いた角度は55°。今でこそスモラバのアイ角度は前倒しのものが主流となっているが、前倒しの角度を採用したのはエグジグが元祖である。

次は、「フックの線径」。

当時のスモラバの使い方は、ULクラスのスピニングロッドに3~4lbと言ったライトタックルが主流。

それと同時に、強めのスピニングロッドにPEラインを組んだパワーフィネススタイルが流行し始めたのもこの頃であった。

そこで求めたのが、「3lbラインを使用したライトタックルでも確実に掛けられ、PEタックルでも破損しない強度」つまり必要なのは、市販されている同クラスのジグヘッドより若干太目の絶妙な線径の設定。

「フックが良い!」と定評を受けるエグジグのフックはこうして完成する。また、「ラバージグはトータルバランス!」である事をこの時に再確認し、フックメーカー所有の既製品フックの形状に合わせてジグを作るのではなく、作りたいジグのバランスに合わせてフックを作るノウハウがこの時に培われる。その後、エッグボールジグ・BFカバージグなど多様化していくQu-onジグシリーズの礎となっていく。

そして最後は「ラバー」。普通のラバージグの開発は、ラバーメーカーが所有するものの中から好みのラバーを選ぶ事がほとんど。

しかし、エグジグに関してはラバーも完全に特注。一般的なラバーはしなやかになびく様に作られているが、それではエグジグが求めるコンセプトには合わない。

「細くても張りが強く、強い水押しながらも繊細な風合い。」を探すため、国内にある釣り具製造とは無関係のシリコン加工工場にオリジナルラバーの作成を依頼した。まずは形状である。

一般的なシリコンラバーの断面は、「長方形」の物が殆どだがエグジグラバーの場合は強い張りと、繊細さを得られる「正方形」に設定。

 

そしてマテリアルは細かく設定された硬度サンプルの中から、最善のものを選出し、ようやく「細くて張りのあるラバー」に辿り着いた。

カラーに関しては、釣具製造とは関係無い工場の為、一般的なワームカラー名(グリーンパンプキン)等の用語は全く通用せず、釣り人感覚の細かなニュアンスの違いは伝わらない。

当時はまだ自分自身の開発経験も浅く伝え方に苦慮したものだが、幾度にも渡るやり取りの末、理想のカラーラインナップが揃う。

長年の不満が解消した瞬間だった。

しかし、こうした苦労の末に出来上がった、最高ラバーに、一つの問題が発生する。

それは、「値段が高すぎる」という事。

それもそのはず、海外の工場ならまだしも、日本の工場でわがままの限りを凝縮したラバーは安いはずが無い。

流通しているシリコンラバーと比較すると、その価格は5~10倍。

釣具メーカーも商売である以上、通常ならこのラバーの採用は許されないが「妥協の無い、最高の物を形にしよう」とのメーカーの判断で、計らずとも高級になってしまった「わがままラバー」の採用が決定した。

こうして、エグジグを構成する為の各パーツが揃い、長きにわたり思い描いていた真のエグジグが完成した。

ところが、当時のジャクソンはラバージグの生産ルートを持っておらず、ここでまたまた問題発生。と言うより、普通のラバージグなら何とでもなる。ただし、エグジグの場合はスカートをピンとフレアさせる為の巻き方のテクニックや、スカートのカット方法など通常のラバージグと比べて数段手間がかかる為、なかなか引き受けてくれる場所が見つからなかった。

その為、ファーストロットに関しては、僕がラバーの巻き方、カット法等をレクチャーし、ジャクソンスタッフ総出でエグジグを作成していたと言う裏話もある。当時、「エグジグは、江口が社内で一個一個手巻きしている!」と言う噂話があったが、それはあながち嘘でも無かったのである。

ファーストロットのエグジグを購入して下さったあなた。それは江口俊介作の正真正銘のエグジグだったかも知れませんよ…(笑)

とそんな調子で、当初の発売予定に大きく遅れてエグジグをリリース出来たのは、2007年11月頃。ルアー業界のタイミングとしては、バスはオフシーズンムードが漂い始め、ニューアイテムをリリースするには遅すぎる季節。

しかし、そんな遅すぎた発売タイミング直後にミラクルが起こる。

それは、発売後すぐに行われたTOP50最終戦生野銀山湖でエグジグがハマり、ついに長年温め続けたスモラバによる勝利を勝ち取る事が出来たのである。

更にエグジグの活躍は自身の優勝に留まらず、お立ち台の上位5人中4人がエグジグを使用しての入賞という快挙。

冬の気配が強まり厳しさを増した晩秋のハイプレッシャーフィールドをエグジグが制圧した形となった。

これまで散々、自作スモラバで優勝を逃し続けて来たが、本当に作りたかったスモラバの理想形が「エグジグ」として形になった瞬間に訪れた勝利。

これが偶然なのか、必然なのかは解からないが、苦労の末に作り上げられたエグジグのポテンシャルを証明するには十分すぎる出来事となった。

そんな奇跡的な出来事のお陰でエグジグの名は瞬く間に認知され、スモラバブームに発展。

様々なトーナメントにおいて数々の実績を残し、多くのアングラーの方々により実績は更に積み重ねられ「スモラバの代名詞」として定着していく。

また、時代の変化やタックルの進化に伴う、新たなメソッドに合わせエグジグはマイナーチェンジを続け、それに伴い「エグジグハイパー」や、「BFカバージグ」の派生モデルも誕生し、死角の無いスモラバラインナップが構築された。

多くの方々の支持のお陰で、現在に至るまで今も色褪せない超実戦的ルアーとして君臨している。

エグジグは、今後も時代の変化に応じて進化を続け、これから先も末永く「超実戦的ルアー」としての機能を失わない。

そんなルアーであり続けてほしいと僕は思う。


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